外壁のメンテナンスを怠るリスクは?余分な出費のリアル
「外壁のメンテナンスはまだ大丈夫」と先延ばしにしているケースは少なくないでしょう。
外壁は毎日、紫外線や雨風にさらされ続けています。
気づいたときには内部まで傷みが進行し、想定外の高額出費になることも考えられます。
この記事では、外壁メンテナンスの必要性から具体的な方法・費用相場、そして放置した場合のリスクまで詳しく解説します。
外壁メンテナンスが必要になる理由
外壁は住宅を守る最前線にあり、常にダメージを受け続けています。
メンテナンスが必要な理由を正しく理解しておきましょう。
外壁は紫外線・雨・温度変化で確実に劣化
どんなに高品質な外壁材でも、紫外線・雨・温度変化による劣化は避けられません。
日本の気候は外壁にとって過酷な環境であり、目に見えない劣化が日々進行しています。
塗膜の劣による防水機能
塗膜が劣化すると防水機能が低下し、外壁材が水分を吸収し始めます。
吸水と乾燥を繰り返すうちにひび割れが発生し、雨水が内部に浸入、やがて構造体まで腐食が進み、建物全体の耐久性が損なわれます。
10年ごとはあくまで目安
「10年ごと」はあくまで目安です。
外壁材の種類や塗料のグレード、日当たり、海沿いかどうかなど、立地環境によって劣化スピードは異なります。
自宅の状態を見て判断しましょう。
外壁に生じるメンテナンスのサインは?
外壁の劣化は、いくつかの症状として現れます。
以下のサインを見つけたら、メンテナンスを検討しましょう。
チョーキング(粉がつく)
外壁を手で触ったときに白い粉がつく現象です。
紫外線の影響で塗料の樹脂成分が分解され、顔料が粉状になって現れます。
これは、塗膜の防水機能が低下している証拠であり、この段階で塗り替えれば下地補修の費用を抑えられます。
ヘアクラック・構造クラック
外壁に入るひび割れには、幅0.3mm未満の「ヘアクラック」と、0.3mm以上の「構造クラック」とがあります。
ヘアクラックは塗膜表面だけのひび割れで、塗装時の下塗りで埋められる程度の軽度な症状です。
一方、構造クラックは外壁材自体が割れている状態で、そこから雨水が浸入し、内部の腐食やカビ発生の原因になります。
構造クラックを見つけたら早急な対応が必要です。
目地シーリングの割れ・痩せ
サイディング外壁の継ぎ目や、窓枠周りに充填されているゴム状の素材をシーリング(コーキング)と呼びます。
シーリングは紫外線や温度変化に弱く、外壁材より早く劣化します。
硬化してひび割れたり痩せて隙間ができると、そこから雨水が浸入します。
外壁の塗膜が健全でもシーリング劣化から雨漏りにつながるケースは多く、見落とされやすいポイントです。
苔・藻・黒ずみ
苔・藻・黒ずみは湿気を好むため、それらが発生している箇所は水分を含みやすい状態に陥っています。
日当たりの悪い北面で発生しやすく、放置すると塗膜の劣化を早めます。
アレルギーの原因にもなるため早めの対処が必要です。
反り・浮き・剥がれ
吸水と乾燥を繰り返すことで外壁材が変形し、反りや浮き、剥がれが発生します。
放置するとさらに水分を吸収しやすくなり、剥がれ落ちることも少なくありません。
塗装では対応できず張替えが必要になるケースもあります。
外壁メンテナンスの方法と費用相場
外壁の状態に応じて、適切なメンテナンス方法を選びましょう。
30坪程度の住宅を想定した費用相場を紹介します。
ひび割れ補修
軽度なひび割れに対する補修工事です。
内容:シーリング充填・Uカット補修
ヘアクラック程度ならシーリング材を充填するだけで対応できます。
構造クラックの場合は、ひび割れ部分をU字に削ってからシーリング材や樹脂を充填する「Uカット補修」を行います。
費用相場:10,000〜150,000円前後
ひび割れの程度や箇所数によって変動します。
高所作業が必要な場合は足場代が別途かかります。
シーリング打ち替え
劣化したシーリングを全面的に交換する工事です。
内容:目地の総交換
古いシーリングを撤去し、新しいシーリング材を充填します。
「増し打ち」という古いシーリングの上に新しいものを追加する方法もありますが、耐久性を考えると打ち替えがおすすめです。
費用相場:150,000〜300,000円前後(30坪)
外壁面積や目地の長さによって変動します。
外壁塗装と同時に行うと足場代を節約できます。
高圧洗浄+部分補修
汚れの除去と簡易的な補修を行う工事です。
内容:苔・汚れ除去+簡易補修
高圧洗浄機で苔・藻・汚れを除去し、軽微なひび割れや傷を補修します。
塗装までは必要ないが汚れが気になる場合に適しています。
費用相場:10,000〜100,000円前後
洗浄のみなら安価ですが、補修範囲が広がると費用も上がります。
外壁塗装(最も一般的)
最も一般的な外壁メンテナンス方法です。
内容:下地補修+塗装3工程
ひび割れ補修やシーリング打ち替えなどの下地処理を行った後、下塗り・中塗り・上塗りの3工程で塗装します。
塗膜を新しくすることで防水性と美観を回復させます。
費用相場:700,000〜1,300,000円前後(30坪)
使用する塗料のグレードによって変動します。
シリコン塗料なら700,000〜1,000,000円程度、フッ素塗料なら1,000,000〜1,300,000円程度が目安です。
外壁カバー工法
既存の外壁の上に新しい外壁材を重ね張りする工法です。
内容:既存の上に新規外壁材を重ね張り
既存の外壁を撤去せずに、その上から軽量な金属サイディングなどを張ります。
断熱性・遮音性の向上も期待でき、工期も短く済みます。
費用相場:1,500,000〜2,600,000円前後
外壁材のグレードや施工面積で変動します。
既存外壁の下地が傷んでいる場合は適用できないこともあります。
外壁張替え
既存の外壁を撤去して新しい外壁材に交換する工事です。
内容:既存撤去+新規外壁材
劣化が激しくカバー工法で対応できない場合に行います。
下地の状態も確認でき、必要に応じて補修できます。
費用相場:1,800,000〜3,000,000円前後
撤去費用や廃材処分費がかかるため高額になります。
外壁材の種類によっても費用は変わります。
メンテナンス周期の目安(外壁材別)
外壁材の種類によって、適切なメンテナンス時期は異なります。
サイディング:10〜15年で塗装、15〜30年で張替え
窯業系サイディングは10〜15年ごとに塗装が必要です。
塗装を繰り返しながら使用し、15〜30年を目安に張替えを検討します。
シーリングの打ち替えは10年ごとが目安です。
モルタル:10〜15年で塗装、ひび割れは随時補修
モルタル外壁はひび割れが発生しやすいため、10〜15年ごとの塗装に加え、ひび割れを見つけたら早めに補修することが大切です。
弾性塗料を使用するとひび割れを抑制できます。
ガルバリウム:15〜20年で塗装、凹みは都度補修
ガルバリウム鋼板は耐久性が高く、塗装の周期は15〜20年と長めです。
ただし、傷や凹みから錆が発生することがあるため、見つけたら早めに補修しましょう。
ALC:10年ごとに塗装必須(防水力で寿命が変わる)
ALC(軽量気泡コンクリート)は吸水性が高いため、塗膜による防水が命です。
10年ごとの塗装を怠ると急速に劣化が進みます。
防水性能を維持することでALC本来の耐久性を発揮できます。
外壁メンテナンスを先送りにした場合のリスク
「もう少し先でいいか」と先送りにすると、思わぬ高額出費につながります。
内部結露・雨漏により補修費が跳ね上がる
外壁の劣化を放置すると、ひび割れやシーリングの隙間から雨水が浸入します。
内部の木材が腐食したりカビやシロアリが発生したりして被害が拡大し、修理費用が膨らみます。
外壁材だけでなく下地まで交換になるケースも
雨水の浸入が続くと、下地材(防水シートや胴縁)まで傷みが及びます。
下地交換が必要になると大規模工事に発展し、構造体の補修まで必要になることも考えられなくありません。
100,000円程度で済んだものが大きな出費になる場合も
早期に対処すれば数万円〜100,000円程度で済んだものが、放置したために外壁全面の張替えや下地交換が必要になり、2,000,000円以上かかるケースは珍しくありません。
まとめ
外壁は住宅を風雨から守る重要な部位であり、定期的なメンテナンスが欠かせません。
「10年ごと」はあくまで目安であり、チョーキングやひび割れ、シーリングの劣化など、自宅の外壁に現れるサインを見逃さないことが大切です。
日当たりや周辺環境によっても劣化スピードは変わるため、自宅の状態を見て判断しましょう。
費用は補修で10,000〜300,000円、塗装で700,000〜1,300,000円、張替えになると1,800,000円以上が相場です。
劣化の程度によって必要な工事と費用は大きく異なり、軽度なうちに対処すれば補修で済みますが、放置すると塗装や張替えが必要になります。
外壁の劣化は放置するほど進行し、修理費用も膨らみます。
定期的に外壁をチェックし、気になる症状を見つけたら早めに専門業者に相談しましょう。
早期発見・早期対処が、外壁を長持ちさせ、余分な出費を防ぐ最善の方法です。