家解体の費用相場は?坪単価目安と「追加請求」を防ぐコツ
目次
「実家を相続したけど、解体費用はいくらかかる?」
「見積もりを取ったら想像以上に高くて驚いた」
家の解体を検討する方の多くがこうした不安を抱えています。
解体費用には「定価」がなく、構造や立地条件によって大きく変動します。
この記事では、構造別の坪単価から追加費用のリスク、賢くコストを抑える方法まで詳しく解説します。
解体費用の仕組みと構造別坪単価
「壊すだけなのに、なぜこんなに高いの?」と感じる方は多いでしょう。
解体費用の内訳と構造別の相場は以下の通りです。
人件費と廃棄物処分費で100万円を超えるケースも
解体費用の内訳は、労務費が約4割、廃棄物処理・運搬費が約4割、足場・養生費が約2割と言われています。
近年は人手不足による人件費上昇に加え、建設リサイクル法により廃材の分別処理が義務化されたことで処分費も高騰しており、「壊すだけ」でも100万円を超えるケースは珍しくありません。
[木造]坪単価:30,000円~50,000円 (30坪で900,000円~1,500,000円)
木造は構造がシンプルで取り壊しやすいため、最も費用を抑えやすい構造です。
一般的な2階建て4LDK(30〜40坪)なら、900,000円〜160万円程度が目安となります。
[鉄骨造]坪単価:60,000円~80,000円 (頑丈な分、機材費と処分費が上がる)
鉄骨造は木造より頑丈なため、解体に専用の重機や工具が必要です。
また、鉄骨の運搬・処分にも費用がかかります。
軽量鉄骨造と重量鉄骨造で差があり、重量鉄骨造の方が10,000円/坪ほど高くなる傾向があります。
[RC造(鉄筋コンクリート)]坪単価:80,000円~120,000円 (最も高額)
RC造は最も頑丈な構造のため、解体に最も時間と手間がかかります。
コンクリートの破砕には大型重機が必要で、騒音・振動対策も必須です。
それに伴い、30坪でも2,400,000円〜3,600,000円と高額になります。
道路が狭く重機が入らない場合費用が2倍になることも
解体費用を大きく左右するのが立地条件です。
道路幅が狭く重機やトラックが入れない現場では、人力での解体作業が中心になります。
この「手壊し」になると、人件費が大幅に増加し、通常の1.5〜2倍の費用がかかることもあります。
住宅密集地や旗竿地などは要注意です。
後から請求される「追加費用」の正体
解体工事でトラブルになりやすいのが「追加費用」です。
見積もり時には分からなかった問題が工事中に発覚し、請求額が膨らむケースがあります。
【地中埋設物】基礎の下から何か出てきたら撤去費が別途必要
地中埋設物とは、建物の基礎の下に埋まっている古い井戸、浄化槽、コンクリートガラなどのことです。
過去に解体した建物の廃材が不法投棄されていることもあります。
これらは建物を解体してみないと分からないため、事前の見積もりには含まれません。
撤去費用は数万円〜100,000円以上になることもあります。
【アスベスト】法規制により除去費用が高額になることも
2006年以前に建てられた建物には、アスベスト(石綿)を含む建材が使われている可能性があります。
アスベストが見つかった場合、法規制に基づく特別な除去作業が必要です。
飛散性の高いレベル1・2の場合は1,000,000円単位の追加費用が発生することもあります。
30坪程度の住宅でレベル3(屋根材・外壁材など)なら300,000円程度が目安です。
【残置物】家具やゴミが残っていると処分費が跳ね上がる
建物内に残された家具や家電、生活用品は「残置物」と呼ばれます。
解体業者に処分を依頼すると、これらは産業廃棄物として扱われるため、一般ゴミの数倍の処分費がかかります。
1立方メートルあたり15,000円程度が相場です。
家財は自分で一般ゴミとして捨てるのが節約の鉄則
残置物の処分費を節約する最も効果的な方法は、解体前に自分で片付けることです。
家具や家電は粗大ゴミとして自治体に回収してもらえば、数百円〜数千円で済みます。
これだけで数万円〜数十万円の節約になることも珍しくありません。
時間に余裕があれば、解体前の片付けは必ず行いましょう。
「分離発注」で数十万安くなる。ハウスメーカーを通さない賢い選択
建て替えを検討している方にぜひ知っておいてほしいのが「分離発注」という方法です。
これだけで数十万円の節約が可能になります。
建て替え時にハウスメーカーに解体も一括で頼むと中間マージンが乗る
建て替えの際、多くの方はハウスメーカーや工務店に解体工事も一緒に依頼します。
しかし、ハウスメーカーは自社で解体工事を行わず、下請けの解体業者に委託するのが一般的です。
その際、工事費の20〜30%が中間マージン(仲介手数料)として上乗せされます。
解体費用が1,500,000円なら、300,000円〜450,000円がマージンとして消えている計算です。
解体だけを依頼する分離発注なら工事費だけ
分離発注とは、解体工事を専門の解体業者に直接依頼する方法です。
ハウスメーカーには新築工事だけを依頼し、解体は別契約とします。
中間マージンが発生しないため、純粋な工事費だけで済み、700,000円〜800,000円も安くなることも珍しくありません。
契約書が1枚増える程度の手間で数十万円節約
「業者を自分で探すのは面倒」と思うかもしれませんが、実際の手間は契約書が1枚増える程度です。
最近はネット上で簡単に複数の解体業者から見積もりを取れるサービスもあります。
節約できる金額を考えれば、手間をかける価値は十分にあるでしょう。
解体後の知らないと損する手続き
家を解体した後には、法的な手続きと税金の問題があります。
知らないと損をする可能性があるため、しっかり確認しておきましょう。
解体から1ヶ月以内に「建物滅失登記」を申請する義務
建物を解体したら、1ヶ月以内に法務局へ「建物滅失登記」を申請する義務があります。
これは建物が存在しなくなったことを登記簿に反映させる手続きです。
解体業者から受け取る「建物取毀し証明書」などの書類が必要になります。
「建物滅失登記」を怠ると10万円以下の過料
滅失登記を怠ると、100,000円以下の過料が科される可能性があります。
土地家屋調査士に依頼すると40,000円〜50,000円程度の費用がかかりますが、必要書類を揃えれば自分で申請することも可能です。
法務局の窓口で相談しながら手続きを進められます。
「固定資産税の軽減措置」が外れ、税金が6倍になるケースも
意外と知られていない落とし穴が固定資産税です。
住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が最大6分の1に軽減されています。
しかし、1月1日時点で更地になっていると、この軽減措置が外れ、税額が6倍に跳ね上がることも考えられます。
解体のタイミングは慎重に検討しましょう。
空き家を解体せずに放置するのは危険?
「解体費用が高いから、とりあえず放置しておこう」と考える方もいますが、これは大きなリスクを伴います。
「特定空家」に指定されると、強制解体などのケースも
2015年に施行された「空家等対策特別措置法」により、管理が不十分な空き家は自治体から「特定空家」に指定される可能性があります。
特定空家に指定されると、固定資産税の軽減措置が解除されるだけでなく、自治体による強制解体(行政代執行)の対象にもなります。
強制解体の費用は所有者に請求されます。
隣家・通行人に被害を与えた場合、数千万円の損害賠償リスクも
老朽化した空き家が台風や地震で倒壊し、隣家や通行人に被害を与えた場合、所有者は損害賠償責任を負います。
建物の瓦や外壁の落下による人身事故では、数千万円の賠償金が発生するケースも考えられます。
管理責任は相続放棄しても逃れられない場合があるため、注意が必要です。
早めの決断が資産を守ることに繋がる
空き家の活用方法としては、解体して月極駐車場やコインパーキングにする方法、更地にして売却する方法などがあります。
いずれにしても、放置して資産価値を下げるよりも、早めに決断して行動することが大切です。
解体費用は年々上昇傾向にあるため、先送りするほど負担は増えていきます。
まとめ
家の解体は、構造や立地条件によって費用が大きく変わる「定価のない工事」です。
木造30坪でも900,000円〜1,500,000円、RC造なら2,400,000円以上と、決して安くはありません。
ハウスメーカーや工務店に任せきりにせず、自分で解体業者を探して「分離発注」するだけで、200,000円〜300,000円以上のコストダウンが可能です。
中間マージンをカットできるメリットは非常に大きいと言えます。
また、地中埋設物やアスベストなどの追加費用リスクを事前に説明してくれる、信頼できる業者に見積もりを取ることが重要です。
複数社から相見積もりを取り、不明点は遠慮なく質問しましょう。
解体工事は一生に一度あるかないかの大きな出費です。
後悔のない選択をしてください。