お風呂への手すり取り付け費用は?介護保険で1割負担にする方法
浴室の手すりは安全な入浴を支える命綱と言って過言ではありません。
この記事では、お風呂に手すりを取り付ける費用相場から、介護保険を使って自己負担を大幅に抑える方法まで詳しく解説します。
浴室での「転倒事故」を防ぐ手すりの役割
浴室は家の中で最も事故が起きやすい場所です。
消費者庁のデータでも、高齢者の家庭内事故の多くが浴室で発生しています。
水と石鹸で滑りやすく若者でも転ぶリスクが
床が濡れている上に、シャンプーやボディソープの泡が残っていると、若い人でも足を滑らせることがあります。
特に冬場は、急な温度差で血圧が変動し、ふらつきやすくなります。
裸足で踏ん張りが効かない状態は、想像以上に危険です。
最近のユニットバスは床が乾きやすい素材を使っていますが、完全に乾くまでは油断できません。
浴槽への出入りは片足になりバランスを崩しやすい
浴槽の縁をまたぐとき、片足で体重を支えながらもう片足を持ち上げる動作が必要です。
この瞬間が最も不安定で、バランスを崩しやすいタイミングと言えます。
手すりがあれば体重を分散でき、安定した姿勢で出入りできます。
転倒するとタイルや浴槽のフチで頭を打ち命に関わる場合も
浴室には硬い素材が多く、転倒時に頭や腰を強打するリスクがあります。
水で濡れた床では受け身も取りにくく、骨折や打撲だけでなく、最悪の場合は溺水事故につながることも考えられます。
手すりは「転ばないため」ではなく「命を守るため」の設備です。
浴室タイプ別・手すり設置の費用相場
手すりの設置費用は、浴室のタイプによって大きく異なります。
ここでは3つのパターンに分けて、それぞれの費用相場を紹介します。
1. ユニットバスへの後付け[相場:30,000〜60,000円/1箇所]
現在の住宅で最も多いユニットバスですが、手すりの後付けには注意が必要です。
「専用手すり」や「補強板」が必要で部材費が高い
ユニットバスの壁は、一般的な住宅の壁と異なり、薄いパネル構造になっています。
そのまま手すりをネジ止めしても強度が足りず、体重をかけた瞬間に外れる危険があります。
壁の裏側から挟み込む専用金具や、補強板を使った取り付けが必要となり、その分部材費が高くなります。
メーカー純正品以外は水漏れリスクがある
ユニットバスの壁に穴を開けると、防水層を傷つけて水漏れの原因になることがあります。
そのため、TOTO・LIXIL・パナソニックなど各メーカーは、自社製品専用の後付け手すりを用意しています。
メーカー純正品以外を取り付けようとすると、リフォーム業者から断られることもあるので注意が必要です。
2. 在来工法(タイル壁)への設置[相場:20,000〜40,000円/1箇所]
昔ながらのタイル張りの浴室は、ユニットバスに比べて手すりを取り付けやすい構造です。
コンクリート下地にアンカーで強力に固定する
タイル壁の場合、下地がコンクリートやモルタルでしっかりしていることが多く、アンカーボルトで強固に固定できます。
手すり本体は5,000円〜15,000円程度、工事費が15,000円程度で、合計20,000円〜40,000円が相場となります。
慎重な施工技術が求められる
タイルは硬い反面、衝撃に弱い素材です。
電動ドリルで穴を開ける際、振動でタイルにヒビが入ったり、割れてしまったりするリスクがあります。
特に古いタイルは劣化していることが多いため、経験豊富な職人に依頼することが大切です。
3. 浴槽の縁(ふち)に挟む手すり[相場:15,000〜30,000円]
工事不要で手軽に設置できる、挟み込みタイプの手すりです。
工事不要・浴槽の縁に万力のように挟んで固定するタイプ(賃貸でも使用可)
浴槽の縁に万力のように挟んで固定するため、壁に穴を開ける必要がありません。
賃貸住宅でも設置でき、引っ越しの際は取り外して持っていくことも可能です。
価格は15,000円〜30,000円程度で、ホームセンターや通販で購入できます。
アロン化成やパナソニックなど介護用品メーカーの製品は、安定感があり信頼性も高いです。
浴槽の形状によっては取り付け不可、蓋が閉まらなくなる場合も
浴槽の縁が薄すぎたり、厚すぎたり、曲面になっていたりすると取り付けられないことがあります。
また、手すりが邪魔になって風呂の蓋が閉まらなくなるケースも考えられるため、購入前に浴槽の形状をよく確認し、対応サイズかどうかをチェックしましょう。
「吸盤タイプは危険?」お風呂手すりDIYで起きる事故と後悔
「工事費を節約したい」「賃貸だから穴を開けられない」という理由で、DIYや簡易手すりを選ぶ方もいます。
しかし、命を預ける手すりで安易なDIYは禁物です。
【吸盤の剥がれ】そのまま転倒する事故が多発
通販サイトでは「強力吸盤」「工事不要」をうたう手すりが数多く販売されています。
しかし、浴室の壁は水垢や石鹸カスで滑りやすく、吸盤の吸着力は時間とともに低下します。
体重をかけた瞬間に外れ、そのまま転倒する事故が後を絶ちません。
吸盤タイプはあくまで補助的なもので、体重を預ける用途には不向きです。
【壁の破壊】、手すりごと壁がベリッと剥がれる
「ネジで固定すれば大丈夫だろう」とDIYで手すりを取り付けたところ、体重をかけた瞬間に壁ごと剥がれてしまったという失敗談は少なくありません。
ユニットバスの壁は薄いパネル構造のため、一般的なネジでは強度を確保できません。
壁の修理費用で、プロに依頼するより高くつくことも考えられます。
【内部腐食】壁の裏側に水が回って柱や土台が腐る
浴室の壁に穴を開けると、そこから水が侵入するリスクがあります。
プロの業者はシリコンコーキングで確実に防水処理を行いますが、DIYでは処理が甘くなりがちです。
壁の裏側に水が回ると、柱や土台が腐食し、最悪の場合は大規模な修繕が必要になります。
目に見えない場所だからこそ、専門家に任せるべきです。
最大20万円まで補助。知っておくべき「介護保険」の活用
手すりの設置費用は、介護保険を使えば大幅に抑えられます。
制度を正しく理解して、賢く活用しましょう。
要支援・要介護認定で手すり工事費用の7割〜9割が支給
介護保険には「住宅改修費支給」という制度があり、手すりの取り付けはその対象です。
支給限度額は200,000円で、自己負担割合に応じて7割〜9割が支給されます。
つまり、1割負担の方なら200,000円の工事でも自己負担は20,000円で済みます。
浴室の手すり1〜2箇所なら、数千円の負担で設置できることもあります。
他のバリアフリー工事(段差解消、滑り止め床材への変更など)と組み合わせて、200,000円の枠内で複数の改修を行う方も多いです。
原則「工事が必要な固定式」が対象
介護保険の住宅改修費支給は、壁に固定する工事を伴う手すりが対象です。
浴槽の縁に挟むタイプや吸盤タイプは、工事を伴わないため「福祉用具購入」の扱いになることがあります。
福祉用具購入の支給限度額は年間100,000円円なので、どちらの制度が適用されるか事前に確認しましょう。
申請にはケアマネジャーの理由書や工事前の写真が必要
介護保険を利用するには、工事前に申請手続きを済ませておく必要があります。
必要書類はケアマネジャーが作成する「住宅改修が必要な理由書」、工事前の写真、見積書などです。
工事が終わってから申請しても支給されないので、まずはケアマネジャーか地域包括支援センターに相談しましょう。
まとめ
浴室の手すりは、入浴中の転倒事故を防ぐための重要な設備です。
費用相場は浴室のタイプによって異なりますが、介護保険を活用すれば自己負担を大幅に抑えられます。
お風呂の手すりは体重を預ける命綱です。
吸盤タイプは吸着力が不安定で、体重をかけた瞬間に外れる危険があります。
DIYでのネジ止めも壁の破損や水漏れの原因になりかねません。
手すりは命を守る設備だからこそ、安易な選択は避けましょう。
ユニットバスは壁が薄く、専用の部材と施工技術が必要です。
メーカー純正品を使い、経験豊富な業者に依頼することで、安全で長持ちする手すりを設置できます。
要支援・要介護認定を受けていれば、工事費の7割〜9割が介護保険から支給されます。
工事前に申請が必要なので、まずはケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してください。
介護認定を受けていない方も、自治体独自の補助制度が利用できる場合がありますので確認してみましょう。