階段手すり取り付けの費用は?1スパン3万円〜の相場とDIYの危険性
手すりは全体重を預けることもある設備です。
DIYでの取り付けには「壁から抜ける」「高さが合わない」といった大きなリスクが伴います。
この記事では、階段手すりの費用相場から、DIYで起こりがちな失敗例、介護保険を使った費用軽減の方法まで詳しく解説します。
手すりの設置を検討している方、費用を抑えたいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
家庭内の事故が最も多いのは階段
家庭内での転倒・転落事故のうち、最も多く発生しているのが階段です。
高齢者はもちろん、若者でも靴下を履いた状態で滑って転落し、骨折するケースは少なくありません。
階段からの転落は、打ちどころが悪ければ命に関わる重大事故につながります。
特に高齢者の場合、骨折がきっかけで寝たきりになるリスクもあり、早めの対策が重要です。
特に危険なのは「下り」の動作です。
階段を下りるときは、片足で全体重を支えながら次の段へ足を運ぶため、バランスを崩しやすい状態が連続します。
加齢による筋力低下や、日常のちょっとした体調不良でも転倒リスクは高まりますが、手すりがあれば、万が一足を踏み外したときにとっさに掴むことができ、大事故を防ぐ「命綱」として機能します。
また、手すりを使うことで足腰への負担が軽減され、自力での上り下りが楽になるという面もメリットです。
工事費込みでいくら?形状別・階段手すり設置の費用相場
階段の手すり設置費用は、階段の形状によって大きく変わります。
また、壁の状態や手すりの素材、階段の段数によっても金額が変動するため、正確な費用は業者に現地調査を依頼して見積もりを取る必要があります。
以下で形状別の費用相場を確認しておきましょう。
1. 直階段(まっすぐな階段)[相場:4万〜7万円]
1階から2階まで一直線に伸びるオーソドックスな形状の階段です。
手すりも直線的に取り付けるため、部材の加工が少なく、最も安価に設置できます。
費用の内訳は、手すり本体と金具類が10,000円〜25,000円程度、取り付け工事費が20,000円〜40,000円程度です。
手すりの素材は木製が一般的で、直径は32〜35mm程度が握りやすいとされ、壁の下地(柱や間柱)の位置に合わせて金具を取り付けますが、下地の位置と取り付け位置が合わない場合は「補強板」の設置が必要になり、追加費用が発生します。
2. かね折れ・回り階段(L型・U型)[相場:7万〜15万円]
途中で90度曲がる「かね折れ階段(L字型)」や、180度折り返す「折り返し階段(U字型)」は、直階段より費用が高くなります。
- L字型階段:46,000円〜90,000円程度
- U字型階段:75,000円〜150,000円程度
コーナー部分を繋ぐ「フレキシブルジョイント」や「エルボ」などの特殊部材が必要になり、部材の点数が増加します。
また、現場ごとに角度や長さが異なるため、手すりのカット調整など施工の手間がかかることも費用が上がる要因として挙げられます。
3. 下地補強が必要な場合[追加費用:1.5万〜3万円]
壁の裏側に柱や間柱がない場所に手すりを取り付ける場合、追加で15,000円〜30,000円程度の補強工事費が発生します。
一般的な住宅の壁は、柱と柱の間に石膏ボードが貼られた構造になっており、釘やネジを打っても固定力が弱く、体重をかけると抜けてしまうため、下地がない場所には「ベース板(補強板)」を壁全体に貼り付ける工事が必要です。
見た目は少し厚みが出るものの、好きな位置にビスを打てるようになり、手すりの強度が格段に増します。
階段手すりDIYの失敗と恐怖
ホームセンターで手すりキットが売られていることもあり、DIYで取り付けようと考える方も多いはずです。
材料費だけで済めば10,000円〜20,000円程度に抑えられるため、コスト面では魅力的に見えます。
しかし、階段の手すりは全体重を預けることもある設備だからこそ、失敗のリスクを知っておく必要があります。
【強度が足りない】石膏ボード用アンカーで固定したら壁ごと抜けた
最も多い失敗が、石膏ボード用のアンカーで手すりを固定してしまうケースです。
アンカーには「耐荷重20kg」などの記載がありますが、これは「静荷重」での数値です。
階段で体重を預けたときや、転びそうになって咄嗟に掴んだときの「動荷重」に対する値ではありません。
手すりはしっかりと壁裏の柱や間柱に固定しましょう。
【高さが合わない】基準通りに設置しても使う人に合わないこともある
一般的に手すりの高さは「段鼻(階段の先端)から75〜80cm」が良いとされています。
しかし、この基準はあくまで平均的な目安です。
実際に使う人の身長や握力、腕の長さに合わせて調整しないと、高すぎて力が入らなかったり、低すぎて腰をかがめなければならない手すりになってしまいます。
一度取り付けてしまうと位置の変更は難しく、壁に穴が残ってしまいます。
プロの業者に頼めば、最適な高さを提案してくれるはずです。
【角度が合わない】コーナー接続が難しく隙間や引っかかりが発生
回り階段のコーナー部分は、ジョイント部材の角度調整が特に難しい箇所です。
階段の勾配に合わせて正確な角度を出さないと、手すりに隙間ができたり、服の袖が引っかかる仕上がりになります。
見た目の問題だけでなく、手を滑らせたときにジョイント部分で指を挟む危険もあり、安全面でも大きな問題が生じます。
申請すれば9割支給も可能?確認すべき「介護保険」
階段への手すり取り付けは、介護保険の「住宅改修費」の対象となります。
条件を満たせば、工事費用の7割〜9割を保険から支給してもらえるため、自己負担を大幅に抑えることが可能です。
対象者と支給限度額
対象となるのは、要支援または要介護の認定を受けた方が住む住宅です。
支給限度額は200,000円までで、自己負担は所得に応じて1割〜3割となります。
例えば、200,000円の工事であれば、1割負担の方なら20,000円、3割負担の方でも60,000円で済む計算です。
直階段への手すり設置であれば、多くの場合この限度額内に収まります。
なお、200,000円の枠は一度に使い切る必要はなく、手すり設置で残った分は段差解消など他の改修に使うことも可能です。
着工前の申請が必須
介護保険を利用する場合は「着工前」の申請が必須です。
ケアマネジャーに相談し、必要書類を揃えて自治体に事前申請を行います。
工事が終わってから申請しても支給対象になりません。
また、DIYで材料だけ購入した場合や、業者を通さない工事も対象外となることがほとんどです。
介護認定を受けていない方へ
まだ介護認定を受けていない方も、自治体によっては65歳以上の高齢者を対象にした独自の補助制度を設けている場合があります。
補助の内容や条件は自治体ごとに異なりますので、手すりの設置を検討し始めたら、まずは地域包括支援センターや市区町村の福祉課に問い合わせてみることをおすすめします。
まとめ
階段の手すりは、転倒・転落から身を守るための命綱です。
体重を預ける設備だからこそ、壁裏の下地(柱)への確実な固定が絶対条件となります。
費用は直階段で40,000円〜70,000円、回り階段で70,000円〜150,000円が目安です。
DIYでの取り付けは、「壁裏センサー」で柱を正確に探すスキルが必要です。
位置を間違えると壁が穴だらけになり、補修費用がかさむリスクもあります。
石膏ボード用アンカーでは体重を支えきれず、手すりごと壁から抜けて転落する事故も報告されており、命を守る設備だからこそ、確実な施工が重要です。
介護保険の住宅改修費を活用したい際はまず、要支援・要介護認定の対象になるかを確認し、対象であれば必ず工事前にケアマネジャーへ相談してみましょう。
認定を受けていない方も、自治体独自の補助制度が使える可能性があります。
安全な暮らしを守るために、複数の業者から相見積もりを取り、信頼できる施工会社を選びましょう。