モルタル外壁はなぜ割れやすい?補修の費用相場
モルタル外壁は独特の風合いと高い防火性で人気がある一方、経年劣化による症状が目立ちやすい外壁材でもあります。
この記事では、モルタル外壁の劣化原因と補修方法、そして気になる費用相場まで詳しく解説します。
モルタル外壁が選ばれ続ける理由
モルタル外壁は1990年代まで住宅の外壁材として主流でした。
現在はサイディングが普及していますが、今なおモルタルを選ぶ方は少なくありません。
その理由は以下の通りです。
職人の左官仕上げが魅力
モルタルは、セメント・砂・水を混ぜた素材を職人が直接塗り上げて仕上げます。
リシン吹き付け、スタッコ、左官仕上げなど、仕上げ方によってさまざまな表情を作り出せます。
工業製品にはない手仕事ならではの味わいが魅力です。
継ぎ目が少なく防火性・耐久性が高い
サイディングのようなパネル材と異なり、モルタルには継ぎ目がありません。
そのため見た目がすっきりし、継ぎ目からの雨水浸入リスクも抑えられます。
また、セメントが主成分のため不燃材料として認められており、火災時の延焼を防ぐ効果も期待できます。
設計の自由度が高い
曲線や複雑な形状にも対応できるため、設計の自由度が高いのも特徴です。
和風・洋風を問わず、建物のイメージに合わせた外観を実現できます。
モルタル外壁で起きやすい劣化とその原因
モルタル外壁は優れた特性を持つ一方で、劣化しやすい弱点もあります。
代表的な劣化症状とその原因を解説します。
ひび割れ(ヘアクラック/構造クラック)
モルタル外壁で最も多い劣化症状がひび割れです。
幅0.3mm以下の細いひびを「ヘアクラック」、0.3mm以上の深いひびを「構造クラック」と呼びます。
モルタルは乾燥する過程で収縮するため、もともとひび割れが発生しやすい素材ではありますが、地震の揺れや建物の動きにも弱く、エネルギーを逃がす継ぎ目がないため、揺れが直接ひび割れにつながります。
紫外線による塗膜の劣化で防水性が落ちると、雨水を吸収・乾燥を繰り返して膨張収縮が起き、ひび割れが進行します。
浮き・剥がれ
施工時の下地処理が不十分だと、外壁の一部が浮いたり、剥がれ落ちたりする症状が発生することがあります。
放置すると落下の危険性もあります。
また、長年にわたって雨水を吸収し続けると、モルタル自体の強度が低下して剥がれやすくなります。
チョーキング(粉ふき)
外壁を手で触ると白い粉がつく現象です。
紫外線や雨風の影響で塗料に含まれる顔料が粉状になって表面に現れると、塗膜の防水機能が低下しているサインです。
この段階で塗り替えを行えば、大きな補修を避けられます。
苔・藻・黒ずみ
緑色の苔や藻、黒ずんだ汚れが外壁に付着する症状です。
モルタル自体には防水性がないため、塗膜が劣化すると水分を吸収しやすくなります。
日当たりの悪い北面や湿気がこもりやすい場所は特に苔・藻が発生しやすく、美観を大きく損ねます。
アレルギーの原因になることもあるため、早めの対処が必要です。
雨だれ跡・色ムラ
窓下などに黒い筋状の汚れがついたり、外壁の色にムラが出る症状です。
外壁についた汚れやほこりが雨とともに流れ、筋状の跡として残ります。
防水性能が低下していると汚れが定着しやすくなり、見た目の劣化が進みます。
劣化別の補修方法と費用相場
劣化の症状によって、必要な補修方法と費用は大きく変わります。
30坪程度の住宅を想定した費用相場を紹介します。
ひび割れ補修(ヘアクラック)
幅0.3mm以下の細かいひび割れは、比較的簡単な補修で対応できます。
- 方法:シーリング・フィラー補修 ひび割れ部分にシーリング材やフィラー(下地調整材)を充填して隙間を埋めます。その後、塗装を行うことで補修跡も目立たなくなります。
- 費用相場:10,000〜50,000円前後(軽度) ひび割れの数や範囲によって変動します。高所作業が必要な場合は足場代が別途かかることもあります。
構造クラック
幅0.3mm以上の深いひび割れは、より本格的な補修が必要です。
- 方法:Uカット・Vカット+樹脂補修
電動工具でひび割れ部分をU字またはV字に削り、シーリング材や樹脂を充填します。削ることで補修材がしっかり密着し、再発を防ぎます。 - 費用相場:30,000〜150,000円前後
ひび割れの長さや深さ、補修箇所の数によって費用は変動します。構造クラックを放置すると雨漏りや躯体の腐食につながるため、早めの対処が重要です。
浮き・剥がれ
モルタルが下地から浮いたり、一部が剥がれ落ちている場合の補修です。
- 方法:モルタル再塗り・部分補修
浮いている部分を剥がし、下地を整えてから新しいモルタルを塗り直します。左官工事が必要になるため、職人の技術が求められます。 - 費用相場:50,000〜250,000円前後
補修範囲の広さによって大きく変動します。浮きや剥がれは落下の危険もあるため、発見したら早めに専門業者に相談しましょう。
チョーキングや色あせなど
チョーキングや色あせ、細かいひび割れが広範囲に見られる場合は、外壁全体の塗装が必要です。
- 方法:下地補修+外壁塗装
ひび割れの補修や下地調整を行った後、下塗り・中塗り・上塗りの3工程で塗装します。モルタル外壁には、ひび割れを防ぐ弾性塗料がおすすめです。 - 費用相場:800,000〜1,400,000円前後
30坪程度の住宅で、足場代や洗浄費用を含めた総額です。使用する塗料のグレードによっても費用は変わります。シリコン塗料なら800,000〜1,000,000円程度、フッ素塗料なら1,000,000〜1,400,000円程度が目安です。
深刻な劣化は張り替えが必要
モルタルの劣化が激しく、塗装だけでは対応できない場合は外壁材の張り替えが必要になります。
- 方法:モルタル撤去+サイディング or ガルバ重ね張り
既存のモルタルを撤去して新しい外壁材に張り替えるか、モルタルの上から軽量なサイディングやガルバリウム鋼板を重ね張りする方法があります。 - 費用相場:1,500,000〜2,500,000円前後
撤去費用や廃材処分費がかかるため、塗装に比べて大幅に費用が上がります。モルタルからサイディングに変更する場合は2,500,000円を超えるケースもあります。
モルタル外壁のメンテナンス周期と注意点
モルタル外壁を長持ちさせるために、押さえておきたいポイントを紹介します。
塗装は10〜15年が目安(環境によって変動)
外壁塗装の耐用年数は使用する塗料によって異なりますが、一般的に10〜15年が塗り替えの目安です。
海沿いや交通量の多い道路沿いなど、環境が厳しい場所では早めのメンテナンスが必要になります。
ひび割れは早めの補修が重要(浸水に直結するため)
モルタルのひび割れは放置すると雨水が浸入し、内部の金属(ラス網)が錆びたり、柱や土台が腐食する原因になります。
小さなひび割れのうちに補修すれば費用を抑えられ、建物の寿命も延ばせます。
モルタル下地の劣化は表面だけでは判断しづらい
チョーキングやひび割れは目視で確認できますが、下地の劣化は表面からは分かりにくいものです。
築10年を過ぎたら、専門業者に点検を依頼して、見えない部分の状態も確認してもらうことをおすすめします。
後悔しないためのモルタル外壁の選び方
これからモルタル外壁を採用する方、塗り替えを検討している方に向けて、後悔しないためのポイントを紹介します。
ひび割れリスクを理解したうえで採用する
モルタル外壁はデザイン性や防火性に優れる一方、ひび割れが発生しやすい素材です。
この特性を理解したうえで採用し、定期的なメンテナンスを前提に計画を立てましょう。
塗料は弾性タイプや高耐候性のものを選ぶと耐久性が伸びる
モルタル外壁の塗装には、伸縮性のある弾性塗料がおすすめです。
ひび割れに追従して塗膜が伸びるため、ひび割れの進行を抑えられます。
また、高耐候性の塗料を選べば塗り替えサイクルを延ばすことができます。
雨だれ・苔対策として縦樋位置・庇の出幅もチェック
雨だれや苔の発生を防ぐには、雨水の流れをコントロールすることも重要です。
縦樋の位置や庇の出幅を適切に設計することで、外壁への雨水の影響を軽減できます。
塗装だけでなく、建物全体で対策を考えましょう。
まとめ
モルタル外壁は、職人の手仕事が生み出す風合いと高い防火性が魅力です。
ただし、乾燥収縮や地震の影響でひび割れが起きやすく、経年劣化は避けられません。
費用は補修で10,000〜150,000円、塗装で800,000〜1,400,000円、張替えになると1,500,000円以上と幅があります。
劣化が進むほど費用もかさむため、早めの対処がコストを抑える鍵です。
定期的に外壁をチェックし、チョーキングやひび割れに気づいたら専門業者へ相談しましょう。
早期発見・早期補修が、モルタル外壁を長持ちさせる秘訣です。