外壁の苔が止まらない…対策と予防、修理費のリアル
ふと気づくと、外壁が緑色に変色している、そんな経験がある方もおられるでしょう。
外壁に発生する苔は、見た目を損なうだけでなく、放置すると建物そのものにダメージを与えかねません。
この記事では、外壁に苔がつく原因から、放置した場合のリスク、症状別の対処法と費用相場、そして再発を防ぐ予防策まで詳しく解説します。
苔の悩みを根本から解決するヒントとして、ぜひ参考にしてください。
外壁に苔がつく主な原因
苔は胞子によって繁殖し、風に乗って飛んでいきます。
ただし、付着しただけでは繁殖しません。
苔が定着・成長するには「水分」と「適度な日陰」が必要であり、これらの条件が揃う場所で急速に広がっていきます。
北面・日陰・風通しの悪い場所で発生しやすい
苔が最も発生しやすいのは、日当たりが悪く湿気がこもりやすい場所です。
具体的には、北面の外壁、隣家との境界に面した壁、ベランダの手すり壁の内側、軒下で風通しの悪い箇所などが該当します。
一日を通して日陰になる時間が長いと、外壁表面が乾燥しにくく、苔にとって絶好の生育環境になってしまいます。
塗膜の防水力が低下し水分を保持しやすくなる
新築時の外壁は塗膜によって保護されていますが、年月とともに塗膜は劣化し、防水性が低下していきます。
防水性が落ちた外壁は雨水を弾かずに吸収しやすくなり、常に湿った状態が続くことで苔が繁殖しやすくなります。
築10年以上経過している場合は、塗膜劣化が苔発生の大きな要因となっている可能性もあるでしょう。
外壁材の凹凸に汚れが溜まり苔が定着する
モルタルやリシン仕上げ、窯業系サイディングなど、表面に細かな凹凸がある外壁材は、苔の胞子が入り込みやすい構造になっています。
凹凸部分に砂埃や花粉などの汚れが蓄積すると、それが苔の栄養源となり、定着・繁殖の助けになってしまいます。
周囲の植栽・土壌・道路環境も影響する
敷地内に樹木や植栽が多い場合、胞子が飛散しやすく、日陰も生まれやすいため苔の発生リスクが高まります。
また、近くに川や水田がある、山に面しているといった立地も湿気が多くなりやすく、苔が発生しやすい環境です。
苔を放置すると起きるトラブル
「苔は見た目が悪いだけ」と思われがちですが、実際には建物に深刻なダメージを与える原因になります。
早めの対処が、結果的に修繕費を抑えることにつながります。
外壁の劣化が早く進む
苔が付着した部分は常に湿気を含んだ状態になります。
外壁材が水分を吸収し続けると、強度が低下し、サイディングの反りや割れ、欠けにつながることがあります。
木材や紙を何度も濡らして乾かすと変形するように、外壁材も繰り返しの吸水で劣化が進行します。
カビ・藻が繁殖し見た目が大きく悪化する
苔を放置していると、やがてカビや藻も繁殖し始めます。
緑色だった汚れが黒ずみを帯びてきたら、カビが発生しているサインです。
見た目の悪化は一気に進み、建物全体が古びた印象になってしまいます。
ひび割れ・チョーキング・シーリング劣化を誘発
湿気を含んだ状態が続くと、塗膜の劣化が加速します。
チョーキング(外壁を触ると白い粉がつく現象)やひび割れ、シーリングの硬化・亀裂といった症状が出やすくなり、苔だけでなく外壁全体のメンテナンスが必要になります。
洗浄だけでは改善せず塗装が必要になる
軽度のうちは洗浄で対応できますが、苔と同時に塗膜劣化が進行している場合は、洗浄だけでは根本解決になりません。
塗膜を新しくしなければ防水性が回復せず、苔は何度でも再発してしまいます。
重度化する前に対処することが、トータルコストを抑えるポイントです。
苔の程度で変わる対処法と費用相場
苔の状態や外壁の劣化具合によって、必要な対処法と費用は大きく変わります。
自分の家がどの段階にあるかを見極め、適切な対応を選びましょう。
軽度:部分的な苔汚れがうっすら付着しているケース
- 対処法:水洗い・高圧洗浄で対応可能 北面の一部や窓下など、限られた範囲にうっすら苔が付着している程度であれば、水洗いや家庭用高圧洗浄機で落とせることがほとんどです。
柔らかいブラシやスポンジで優しくこすり、中性洗剤は薄めて使用するのが基本です。 - 費用相場:10,000〜50,000円前後 自分で行う場合は洗剤やブラシ代で3,000円程度。業者に高圧洗浄を依頼する場合は10,000〜50,000円程度が目安です。
中度:広範囲に苔・藻が付着しているケース
- 対処法:バイオ洗浄+高圧洗浄での除去 外壁の広範囲に苔や藻が広がっている場合は、通常の高圧洗浄だけでは落としきれないことがあります。
バイオ洗浄は特殊な薬剤を使用し、苔やカビの菌を根元から除去する方法です。
表面だけでなく内部に入り込んだ菌にも効果を発揮します。 - 費用相場:30,000〜100,000円前後 バイオ洗浄は通常の高圧洗浄より費用がかかりますが、再発を抑える効果が高いため、繰り返し発生している場合は検討する価値があります。
重度:苔+チョーキング・ひび割れを伴うケース
- 対処法:外壁塗装+シーリング補修 苔の発生と同時に、チョーキングやひび割れ、シーリングの劣化が見られる場合は、洗浄だけでは対応できません。
塗膜が劣化しているため、外壁塗装で防水性を回復させる必要があります。
シーリングの打ち替えも併せて行うことで、雨水の侵入を防ぎます。 - 費用相場:700,000〜1,200,000円前後 一般的な戸建て住宅の外壁塗装費用は700,000〜1,200,000円程度が相場です。足場代、高圧洗浄、下地処理、塗装、シーリング補修などが含まれます。
何度も再発しているケース
- 対処法:防藻・防カビ性能の高い塗料での再塗装 「洗浄しても数年で苔が戻ってくる」という場合は、立地や環境の影響が大きいと考えられます。
この場合、通常の塗料ではなく、防藻・防カビ性能を持つ塗料を選ぶことで再発を大幅に抑制できます。
光触媒塗料なども効果的です。 - 費用相場:800,000〜1,300,000円前後 防藻・防カビ機能付きの塗料は一般的な塗料より単価が高くなりますが、長期的に見れば洗浄を繰り返すよりコストパフォーマンスが良い場合があります。
苔を自分で落とせる場面とプロに任せるべき場面
苔の除去は自分でできるケースと、業者に依頼すべきケースがあります。
無理にDIYで対応しようとすると、かえって外壁を傷めてしまうこともあるため、状況を見極めることが大切です。
DIY可能:軽度で範囲が狭く、外壁が健全な場合
苔がうっすら付着している程度で、外壁にひび割れや剥がれがなく、1階部分など手が届く範囲であれば、自分で対応できます。
柔らかいスポンジやブラシを使い、中性洗剤を薄めた水で優しく洗い流しましょう。
市販のコケ取りスプレーも軽度であれば効果があります。
DIY不可:高所/外壁の強度が弱い/ひび割れ併発
2階以上の高所は転落の危険があるため、自分で作業するのは絶対にやめましょう。
また、外壁にひび割れや塗膜の浮きがある場合は、洗浄によってさらにダメージを与える可能性があります。
こうした場合は専門業者に依頼するのが安全です。
苔を再発させないための予防方法
苔は一度発生すると再発しやすい厄介な存在です。
除去した後も、再び苔が生えにくい環境を整えることが大切です。
水が溜まりにくい環境にする(雨樋・植栽の見直し)
雨樋が詰まっていると、オーバーフローした水が外壁を伝い、苔の原因になります。
定期的に雨樋の清掃を行いましょう。
また、外壁に密着するように植栽がある場合は、剪定して風通しを良くすることで湿気がこもりにくくなります。
定期的な洗浄で汚れを蓄積させない
苔の胞子は常に飛散しているため、完全に防ぐことは難しいですが、定期的に外壁を水洗いすることで汚れの蓄積を防ぎ、苔の定着を抑えられます。
年に1〜2回程度、ホースで水をかけて汚れを流すだけでも効果があります。
防藻・防カビ塗料を活用することで再発を抑制
外壁塗装の際に防藻・防カビ性能のある塗料を選ぶことで、苔の発生を長期間抑えられます。
苔が繰り返し発生する環境では、通常の塗料より防藻機能付きの塗料を選ぶことを強くおすすめします。
劣化が早い北面は塗膜状態のチェックが重要
北面は日当たりが悪く乾燥しにくいため、他の面より苔が発生しやすく、塗膜の劣化も進みやすい傾向があります。
定期的に北面の状態をチェックし、チョーキングやひび割れがないか確認しましょう。
早期発見・早期対応が、大きな修繕費を防ぐカギになります。
まとめ
外壁の苔は”湿気+塗膜劣化”が重なった劣化サイン
苔が発生するということは、その場所に湿気がこもりやすく、塗膜の防水性が低下している可能性が高いです。
単なる汚れではなく、外壁の健康状態を示すサインとして捉えましょう。
軽度は洗浄、中度はバイオ洗浄、重度は塗装が必要になる
苔の程度と外壁の状態によって、必要な対処法は異なります。
軽度であれば水洗いや高圧洗浄で対応できますが、広範囲に広がっている場合はバイオ洗浄、塗膜劣化を伴う場合は外壁塗装が必要です。
早めの対応がトータルコストを抑えます。
予防の決め手は「水分を溜めない環境」と「防藻塗料での保護」
苔の再発を防ぐには、雨樋の清掃や植栽の剪定で水はけを良くし、定期的な洗浄で汚れを蓄積させないことが大切です。
塗装の際には防藻・防カビ機能のある塗料を選ぶことで、長期間にわたって苔の発生を抑えられます。気になる症状があれば、早めに専門業者に相談することをおすすめします。